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実務修習(民事裁判修習)〜無限ループの中でもがけ〜

今回は第4クールだった民事裁判修習について。

第4クールは6月下旬から8月中旬まででした。

 

箇条書きで自由に書きます。

 

・実務修習のラスト。民事を中心に扱う弁護士になる身としては最も将来に直結するものであるから重要性を常に意識していた。

・しかし、この頃は体がなんだか重いという状態が続いており、思うように調子が出なかった。体の調子を一定以上に保つことも大切なスキルだと思う。

・私の修習地の民事部は、たくさん裁判官がいた刑事部とは異なり、多くても2合議体作れるか否かくらいの数の裁判官で構成されている。私が配属された部は4名の裁判官だった。

・民事部の場合、部ごとに専門があることが多い。労働医療、行政、倒産、建築等である。東京等の大規模なところであれば、刑事部でも専門がある。逆に小規模なところでは専門がなく何でもやることになる。専門訴訟の専属管轄を東京地裁にしたりするのは、こういうところにも理由があると思われる。

・部ごとに配属される修習生の数は、刑事裁判修習と同じく、3~4人程度であった。また、基本的に裁判官室にいることになるのも刑事裁判修習と同様である。

・私の配属された部では、裁判官1人に対し修習生1人が付き、単独事件についてはその方の仕事を中心に見ていくという方法がとられていた。1か月が経過した頃に担当のシャッフルもあるので、縛りが強くないし、1人に付いて丁寧に学べるというのは優れた制度だと思う。合議事件については、別途見る機会があった。

・私が前半に付いたのは、右陪席のひとりで、最初の2週間は全件傍聴(全ての事件を傍聴すること)が義務付けられた。手続傍聴にあたっては、事件記録を閲読しておく必要があるので計画的に動く必要があった。手続傍聴後には手続以上の時間をかけて解説や議論の機会を設けてくださったので、たくさんのことを学べたと思う。ここまで時間を割いてもらえるのは本当にありがたい。

・ただし、傍聴→解説→傍聴→解説→…の無限ループに入って部の修習生の中でひとりだけ疲弊していた(他の修習生は任意の事件のみ傍聴というルールだった)。この無限ループの合間を縫って事件記録の閲読をしていた。かなりハードだったが、この中で事件記録の効率的な読み方が自然と身についていった気もする。

・後半は、部長に付くことになった。傍聴の数は少なくなったが、ひとつひとつの事件にじっくり向き合って学ぶことができ、こちらも大変勉強になった。

・民事裁判修習の内容としては、起案、法廷傍聴等、特殊事件・特殊手続への関与等、その他研究等がある。

起案は、問研起案のほか、配属部指定の起案担当裁判官指定の起案があった。

問研起案は、これがラストになった。民事裁判起案は、午後のみの実施と時間が短縮されているので注意。しかし、起案自体はフル起案であるので気は抜けない(難易度は集合修習のものと比べると易しめに設定されていたようには感じるが)。

・刑事系の起案とは、趣きが異なる部分もあるので対策はしっかりしておくべき。

・対策のポイントについては、以前投稿した書き方の記事を参照されたい。民事裁判の記事が書き方の記事のシリーズの中で1番参考になると思う。

・問研起案以外の起案は、4本以上というノルマがあり、うち2本以上は事実認定起案でなければならない。

配属部指定の起案は、既済記録のうち、修習生向きのものを用いて、研修所起案の方式で書くというものであった。2本あり、うち1本は修習生にとってはややニッチな法分野であったが、結局やるべきことは同じである。

・左陪席から丁寧な解説があり、研修所起案のコツや勉強方法、集合修習への臨み方等、二回試験への不安や疑問を解消していただけるような内容のお話もいただいた。

担当裁判官指定の起案は、進行中の事件の記録を用いて起案をするというものであった。問題意識を持って手続傍聴に望めたので良かったと思う。事件につき担当裁判官とより深い議論ができた。

法廷傍聴等の対象は、弁論準備(電話会議含む)、進行協議、弁論であった。

・いずれも民事実体法、手続法の知識がたくさん必要になってくる。自分では全てを賄いきれないので裁判官の解説はすごくためになった。

・手続に関しては、白表紙の『民事訴訟第1審手続の解説』を良く読んでおくことをおすすめする。かなり有用である。

・民事裁判修習における法廷傍聴等は一見するとあっさり終わってしまうものが多いため、問題意識を持って望むことが特に重要だと思う。

特殊事件・特殊手続への関与等としては、保全・執行・倒産についての講義特殊事件・特殊手続の法廷傍聴等があった。

・修習地によっては、保全・執行・倒産につき生の事件に触れられる機会があるだろうが、私の修習地では、民事部のうちのひとつが倒産部として独立しており、ここに保全・執行・倒産の事件が集中しているため、そのような機会はなかった(本格的に勉強したい場合は、選択修習の個別プログラムを履修することになる)。そこで、倒産部の裁判官らが、これらの分野について講義を実施してくださった。事前に課題等も課された。

・特殊事件については、配属された部の専門に関係するものの法廷傍聴をした。

・特殊手続については、証拠保全面談(審尋)の傍聴をした。また、書記官事務講義もこの枠組みの修習として受けた。

その他研究等には、初日のオリエンテーション、左陪席の職務と日常についての講義、要件事実勉強会、事実認定勉強会、手続勉強会、争点整理講義、毎朝の手続勉強会があった。

初日のオリエンテーションでは、民事裁判修習で身に付けるべきこと等を教わった。最初の意識付けは大事。

左陪席の職務と日常についての講義は、その名の通り、左陪席の生活を教えていただくというものでお昼を食べながら行う和やかな会であった。裁判官になるために相当の勉強をしてきたはずであり、また、任官してからも研鑽を続けていることは明らかだが、どのような時間の使い方をしているか直接聞いたりできる良い機会だった。

各種勉強会は、事前に起案を提出して望むものであった。いずれも重要な内容であった。日々の修習をしながら、起案をした上で修習時間外にこれらの勉強会に参加するのは大変であるが、参加して良かったと思う。

争点整理講義は、導入修習前に研修所から出された課題を担当裁判官に提出し、これにつき解説を受け、DVD視聴を行うというものであった。

毎朝の手続勉強会は、別の部で開催されていた『民事訴訟第1審手続の解説』を用いいた30分程の勉強会である。第4クールは夏期休廷期間と重なり、一部の修習生が自分たちの配属部に移ってくることになっていたので、そのお返しとして参加させて頂けることになっていた。かなり濃密な時間だったと思う。

・民事裁判修習中は、この他にもいくつかの勉強会に参加した。本当に裁判官は勉強会をたくさん実施していて研究熱心だと感じる。

・民事裁判修習では、色々な書籍を参考文献として薦めて頂いた。それらについては、実際の修習中に自ら聞いてみるのが良いだろう。あまりにも多いので、刑事裁判修習の記事で書いたようなおまけを作ることは諦める。

・民事裁判修習では、たくさんの起案をしたと思う。やはり数をこなすことは分かりやすく力をつけることのできる方法だと感じる。

・民事のカバー範囲はかなり広いので、民事裁判修習のみではやはり基礎的な素養を十分に身に付けるには足りない部分も多いと思う。自学自習が強く求められている。あるいは、選択修習で補完していくのも良いだろう(自分についても全国プログラムの東京地裁知的財産部修習がそういった機能を果たした面があると感じている)。

企業法務のための民事訴訟の実務解説』(圓道至剛)は、企業法務のみならず、民事一般にかなり使える良書なので、民事裁判修習のお供におすすめしたい。

・第4クールであったが、民事についてはまだまだであることを痛感し、深く反省することになった。もっと早い時期から継続して民事の勉強に特化して勉強しておけば良かったとも思う。

・第4クールであったため、たくさん起案をしたホットな状態でそのまま集合修習に入っていけたのは良かった。

・刑事裁判との比較の視点も有用である。

・このシリーズの記事の中では最も文字数は少ないが、それは携わった事件の数が最も多く、うっかり内容に踏み込んで守秘義務に反しないようにしているからである。充実度は他の修習と変わらない。

 

民事裁判修習は、派手さはなかったのですが、地道な積み重ねをしていけば、確実に必要な力をつけていける良いカリキュラムだったと思います。

 

以上で実務修習シリーズは終わりです。

毎日投稿するのは結構大変でしたが、いかがでしたでしょうか。残りの集合修習と選択修習も順次書いていきたいと思います。