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選択修習〜レッドブルを飲んだよう〜

今回は選択修習についてです。

 

箇条書きで自由に書いていきます。

 

・A班とB班とで集合修習と選択修習の順番が前後することは集合修習についての記事で説明した通り

・選択修習は、ホームグラウンド修習、全国プログラム、個別プログラム、自己開拓プログラムの組み合わせで行われる。

・一定のルールがある(ホームグラウンド修習を連続した数日行わなければならない等)が、基本的には各自で任意にこの組み合わせを決めることができる。

・まず、一般的な話を書いていく。

ホームグラウンド修習は、弁護修習先で弁護修習の補完・深化を行うというもの。基本的に実務修習中の弁護修習と同じだと思って良い(ただし、自分の配属先では弁護修習の時よりも自分で考えて動いて良いと言って頂いたので反省点を活かしてより自由に修習をさせてもらうことができた)。

・事務所内で二回試験対策の勉強に終始したり、指導担当に休みの許可を得て自宅で勉強する修習生もいるらしいが、ルール上はアウト。そうならないように日々の勉強をしっかりしておくべき。

・ホームグラウンド修習で二回試験対策も兼ねた勉強はできるので心配はいらない。

・具体的には、民事ならば準備書面の起案、刑事ならば最終弁論の起案をさせて貰えば良い。また、ホームグラウンド修習だからといって、弁護士としての起案しかしてはならないというルールはないので、検察官の論告や裁判官の判決を想定して起案することもできる。

・こう考えると、二回試験対策の勉強を理由にホームグラウンド修習に向き合わないのは、ルール上の問題はもちろん、大きな機会損失にもなっていると思う。

・ただし、物事の考え方は色々あって良い。状況は人それぞれで、二回試験への不安もとても分かるし、勉強をするためにそのような方法をとっておられるはずなので、絶対悪だと考えている訳ではない。リスク管理的な視点での指摘だと思って頂ければ。

全国プログラムは、全ての修習生を対象に設けられているプログラム。定員はどれも少ないが、魅力的なプログラムが揃っているので参加を検討すると良い。交通費等も最低限は支給される。

個別プログラムは、各修習地ごとに設けられているプログラム。修習地ごとに内容や期間設定は様々である。こちらは定員数がある程度確保されているので、人気のプログラム以外は希望が通りやすい。

自己開拓プログラムは、修習生自身で交渉を行い好きなところで修習ができる(もちろん司法修習に相応しい内容でなければならない)プログラム。修習生のうちに学びたい、あるいは、修習生のうちでしか学べないことがある場合は積極的に利用すると良いと思う。とはいえ、自己開拓プログラムを受け入れてくれるところは決して多い訳ではないようで、コネを使っている人も少なくない(例えば、元フジテレビアナウンサーの菊間千乃弁護士は著書『私が弁護士になるまで』で、自己開拓プログラムとしてフジテレビでの修習を行ったとしている)。

・選択修習のカリキュラム決めは、実務修習中に行うことになるのだが、プログラムごとに申請やその結果発表の時期が異なるので思い通りにいかないことも多い。私の場合、順番としては、全国プログラム→自己開拓プログラム→個別プログラム・ホームグラウンド修習の順で申請と発表があるという形であったが、全国プログラムが比較的長い期間あり、そこと重複する個別プログラムが多かったため、個別プログラムの選択の範囲が狭まってしまった。また、自己開拓プログラムの申請時期がかなりタイトであり、個別プログラムに何があるかもよく分かっていない状況だったので、自己開拓プログラムの利用は諦めることにした。

・こういった制度的な難しさがあるので、早いうちに選択修習で何をしたいかを良く考えておくと理想に近い組み合わせにすることができるのではないか。

 ・また、特にA班の場合は選択修習の終了直後に二回試験があるので、あまりタイトに詰めすぎると体力的に大変になる可能性がある。少し余裕を持たせておくという考え方もあると思う。

・では、私の選択修習について書いていく。

全国プログラムとして東京地裁知的財産権部修習を2週間、個別プログラムとして警察署見学等(検察庁主催プログラム)を1週間、その他の期間はホームグラウンド修習という流れで過ごした。

・上記のように東京地裁知的財産権部修習の2週間が、期間的にも位置的にも、多くの個別プログラムと重なっていたため、個別プログラムの選択数が1つになった。もう1つくらいは履修できたが、あまり詰めすぎても消化不良になるおそれがあるのでこの範囲でおさめ、ホームグラウンド修習で調整しようと考えた。

全国プログラム東京地裁知的財産権部修習はずっと楽しみにしていた。知的財産法分野については大きな関心をもって勉強してきたからである。実際、素晴らしいプログラムであったし、ここでも人に恵まれたため、心踊る日々であった。

・内容としては、部長の講義、知財高裁裁判官の講義、特許庁見学、ケース研究、配属部における記録の閲読や手続傍聴があった。配属部は東京地裁に4部ある知財部の中のいずれか。加えて、知財高裁の4部のうちいずれかにも2日間配属される。

・配属のされ方は、実務修習中の裁判修習と同じで、各部に4~5人の修習生がいるような形。全国プログラムであるため、各修習地の修習生と一緒に学べるのはとても刺激的であった。また、同じ分野に関心のある修習生の集まりなので話も盛り上がる。

・全体で見ても、知財のブティック系の事務所に行く方やインハウスローヤーになる方、理系出身の方が多くいて「この修習ならではだな」と感じた。余談だが、私は、そういった人たちからですら知財のマニアックな本を読んでいて引かれた。変人。変態。えろちっく。

・自分の事務所は、知財をたくさん取り扱ってはいないが、この経験を活かして何かできたらいいなと思っている。そういう意味では、夢の広がった修習であった。

・同じ配属部だった東京修習の修習生に案内してもらい色々なところにお昼を食べに行った。東京修習のお昼の充実度は素晴らしい。自分でもおかしいとは思っているが、おいしくごはんを頂きながら「なんて東京修習の人は羨ましいんだ」と妬んでいた。食べ物の恨みは怖い。地裁のみならず、法曹会館や弁護士会館、各省庁に美味しいお店がたくさん。

個別プログラム警察署見学等もとても勉強になった。修習地の検察庁主催のプログラムで、人気のため抽選だったようである。

警察本部捜査第一課の業務の立会科捜研及び鑑識課での研修、警察署の各課の業務の体験等を行った。

・当初、社会科見学に近くなってしまうのではないかと思っていたが、全くそのようなことはなく、法曹になる者として、弁護士になる者として勉強になることがたくさんあった。やはり警察の仕事と法律は切っても切れないのだなと。私たちが研修所で行っている事実認定と同じことを現場で行っていたり、その大前提となる部分を緻密にされていたり(指紋の同一性の確認等)。実務家としてこういった部分について負けないよう常に追求していく姿勢の大切さを感じた。

・短い期間ながら、一通りの業務を学べたのも大きい。弁護士との協働の場面も多く、その際に心がけるべきことも教えていただいた。

ホームグラウンド修習では、指導担当の先生が長年続けてきた大きな訴訟の尋問を傍聴したり、刑事のみを扱う先生の下で刑事事件の一連の起案を行いほぼそのまま使って頂き判決までの全てに立ち会ったり、委員会活動で地元の高校に行き模擬裁判で証人役や被告人役を務めたり(これで修習(刑事裁判修習集合修習)中の模擬裁判で法曹三者のみならず全ての役を体験することができた)、鑑定の経験をたくさんされている医師の講演会に行ったり、配属先の先生が行う個別プログラムの一部に参加し実質的な個別プログラムの受講をしたり、弁護修習中に携わった事件で無罪になったものの記録の閲読を行ったりした。もちろん、この他に各種起案等の弁護修習と同様のこともしている。

・このようにホームグラウンド修習での動きを工夫することで、色々なカバーをすることができる。弁護修習と同様、積極性が重要になるのではないかと思う。

 

選択修習は、「これまでの修習で学んできたこと」と「プログラムの自由さ」の掛け算で翼を授かったような感じになりました。どのように過ごすかは難しいのですが、せっかくの機会なのでチャレンジしてみると良いのではないでしょうか。正解はないですし。

先輩の話を聞いてみたり、同期に相談してみると意外な切り口があったりするので面白いです。