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司法試験の選択科目の選択

先日、司法試験の選択科目をどう選んだら良いかについてTwitter上で話題になっていたのを目にしました。

 

司法試験から離れて1年以上が経過しているので、基本的に司法試験についての言及はしないようにしています。司法試験についてのアドバイスはそれだけ鮮度と質が重要だからです。

ですが、選択科目の選定は、鮮度が問題になりにくい性質のお話であると思っていて。いつかこの点について記事にするつもりでしたので、この機会に自分の考えをまとめておきます。参考程度にご覧頂ければ。

 

1 選定基準

 

⑴ 関心がある

 

司法試験という資格試験のための勉強になるとはいえ、やはり、勉強していて「楽しい!」と思える要素があることは重要だと思います。多少辛いことも、楽しさや興味が乗り越える原動力になるかと。

 

⑵ 司法試験で点が取れる採算がある

 

その選択科目を受験して、点が取れるか(失点を防げるか)を考えてみるのも良いと思います。点を取れるかは、必要な勉強ができる環境が整っているかに依存するところが大きいです。

大学やロースクールにどれくらい選択科目を学べる授業があるか、周囲に同じ選択科目を選んだ仲間や先輩はいるか(あまり情報がない選択科目では話のできる仲間は大切)はまず気にするべきところなのでしょう。

また、当該選択科目の受験者数も気にしておくべきだと考えています。受験者数が多いほど、予備校の講座やテキストも充実しますし、市販の教材も多くなります。これらの選択肢が一定程度ある方が、しっくりくる勉強をしやすくなるので、精神衛生上も良いかなと。

また、特に社会人経験のある方に言えることかも知れませんが、これまでの経験・経歴を活かせるかという視点で見るのもひとつだと思います。例えば、労働局での職歴があれば、労働法は馴染みやすいでしょうし、弁理士資格をお持ちなら、知的財産法でアドバンテージをとれるのは間違いないでしょう。

 

⑶ 将来役立てたいと思っている

 

司法試験の合格後まで考えて選択科目を決めるという判断もあると思います。

法律事務所の就活において、選択科目がひとつの基準になっている事務所がありました。将来行きたい事務所があったり、やりたいことが明確になっている方は、そこも意識しておくと良いのかなと。

もちろん、司法試験の合格が受験生の至上命題ですので、上記⑵の面も良く考えて決めることをおすすめします。

 

2 注意すべきこと

 

選択科目をいずれにするかにつき、色々な意見があるかと思います。

個人的に注意した方が良いなと感じる部分があるので、指摘しておきます。

 

⑴ 根拠の不明瞭なアドバイス

 

しばしば、「この選択科目は簡単だよ。」「この選択科目は範囲が狭いよ。」といったアドバイスが見受けられます。

しかし、そのアドバイスに明確な根拠があるかは慎重に判断した方が良いと思います。そもそも、司法試験の選択科目を複数科目にわたって司法試験合格レベルまで勉強していなければ、比較の条件は揃っていませんから、科目間の純粋な比較はできないことになります。そういった条件を揃えている方のアドバイスでない場合、鵜呑みにするのは危険です。

そもそも、「簡単」「範囲が狭い」というのは、評価の伴う言葉です。純粋な事実レベルまで落として見なければ、他人の感覚に大きな選択を委ねることになってしまいます。

 

⑵ 選択科目の位置付け

 

選択科目は、他の7科目と同じ配点がなされているのにもかかわらず、やや軽視されている部分があります。

しかし、司法試験の合格という点で見れば、どの科目でとった1点であれ、同じ1点になりますので、「楽なものを選ぼう」みたいな考え方やアドバイスは違うのかなと思っています。

 

※酷な話になりますが、司法試験合格者それぞれの選択科目の選択は、合格との関係では全て正解ということになります。先にも書いたように至上命題の合格を手にしていますので。このことを逆手にとって考えれば、受験生の皆様は自分の選んだ選択科目で司法試験に合格して、その選択を正解にしようという発想が大事になるのかなと思います。

 

3 私の話

 

私は、知的財産法を選択しました。

理由は上記1⑴の「関心がある」というところが強かったからです。副次的に上記1⑵や⑶も意識はしていましたが、知的財産法はやっていて楽しいのですよね。自分のロースクールで、知財系の科目を全部履修し尽くしたのは私くらいだと思います。

もっとも、知的財産法には難しい部分もあります。司法試験との関係では、民法や民事訴訟法、行政法の知識も絡んできますし、特許法と著作権法という2つの法を学ばなければならないので、それなりに時間を割かないといけません。また、毎年のように改正があるので対応していく必要があります。テクノロジーやエンタメに関わるため楽しい装いをしていますが、中身はなかなかの曲者です。

私に関心がなかったら相当負担になる科目だったのだろうなと感じます。軽々に「おすすめ科目だよ!」とは言えません。面白い分野ですが。

 

そんな感じで、選択科目の選び方のお話でした!