弁護士の収入・所得
仕事をしていれば大事になることのひとつがお金の話。
弁護士の業界は「稼げそう」というイメージはあっても、実際にどれくらいの数字になるか、どれくらいが相場なのかははっきりしないところです。
その感覚は、1年ちょっと弁護士としてやってきた私でも昔とあまり変わりません。
とはいえ、収入や所得のことについぐるぐると考えてきた身として、簡単にお金のことをまとめておこうと思います。
これから弁護士を目指すという方や就活中の司法修習生のみなさまの参考にもなれば幸いです。
弁護士全体の収入・所得
日本弁護士連合会が出している弁護士白書2018
こちらによると、弁護士の
収入は
・平均値:2143万円
・中央値:1200万円
所得は
・平均値:959万円
・中央値:650万円
という感じです。分母が弁護士全体の数と比較してかなり少ないので、実際とはやや離れていると思います。
おそらくですが、弁護士全体で統計をとれたら上振れするはず。
弁護士1年目の年収
まず実体験も含めて、弁護士1年目でどれくらい稼げるのかですが、全国の平均でみると600万円前後になると思います(上記の弁護士白書2018によると収入の中央値は弁護士1〜5年目までで600万円。)。
もう少し掘り下げると
法律事務所は、
・五代などの大手事務所で1200万円
・もう少しもらえる事務所(外資系とか)で1300〜1800万円
・都市部の事務所が500~1000万円(企業法務系の方が高い傾向)
・地方だと400〜700万円くらい
という印象(色々聞いたり、各事務所の弁護士募集要項とかひまわりとか見た感覚値です)。
会社等のインハウスは、
・400~800万円くらい
という印象(ググって出てきた日弁連の2018年頃のインハウスの収入の統計だと750万円までが大体半数を占めていましたが、この統計は、対象が1年目だけに限らず、管理職等も多く含まれています。上の数字は実態に近いと思われます。)。大学院卒の社会人1年目という位置付けになることも多いので、事務所より少し控えめになるのは仕方ない部分かもしれません。とはいえ、福利厚生等を踏まえたらそこまで大きな差はないと考えています。
ざっくりといえばこんな感じなのではないかと。
ちなみに、以上は属人的な上乗せを抜きにした話です。これを持ち出すとキリがありません。社会人経験が弁護士業に直結する方や一部のスーパーマン、報酬的に良い事件を受任できた人は収入を大きく伸ばします。ちなみに1年目で収入を伸ばしやすいのは個人事件が認められている街弁です。1500〜2000万程度までいく方もちらほら。当然、初年度の稼ぎで同期の年収の序列がずっと変わらないということはありません(そういった意味で下記の③とかは結構大事。)。
そして、弁護士の収入を考える上で大いに参考になるのが、弁護士数等で急速に拡大しているアディーレやベリーベストの年収だと思います。
市場を調べてより良い人材が集まるように良いラインを設定しているはず。
ざっくりとした紹介ですが、アディーレが650万+α、ベリーベストが600万という感じ。
色々と条件の違いがありますが、どちらでも頑張ればここに上乗せできるようなので1年目から700~800万くらいは全然いけるという印象。
この点からも上記の整理は概ね妥当なのではないかと考えています。
これから弁護士になろうと考えている方は、これらを踏まえつつ、
①最終的に手元にお金がいくら残るか(金銭面の条件)
②どのような働き方になるか(仕事面の条件)
③収入の伸び代がどれくらいあるか(金銭面の成長性)
④自分が弁護士の仕事に何を求めているか(仕事面の成長性)
を付き合わせて就職先を決めることになるんだと思います。
もちろん年収のみを見て
・金額が低すぎるところは避ける(新人を大切にしないと言っているようなもの)
・ある程度の高い金額だから若干の不満があっても耐えられると考えて厳しい環境に挑戦してみる
といった判断をすることはあるのだと思います。
以下、①から④についてサクッと触れていきます。
①最終的に手元にお金がいくら残るか(金銭面の条件)
金銭面の条件はとても大事です。上述した年収のお話というのは専ら表面的なものであったりすることも多く、条件によって手元に残るお金は大きく異なります。収入と所得の違いというやつですね。
例えば、弁護士会費が事務所負担になるかどうかだけで年数十万円も違ってきます。しかも弁護士会費の負担は永続的なものなので、その差はかなり大きいです。
注目すべきは次のような点でしょうか。
・雇用or業務委託(主に事務所の話。弁護士法人化しているかもひとつの参考になります。)→確定申告とか税金のお話にも絡んできます。
・弁護士会費の負担
・交通費や諸経費の負担
・その他募集要項に書いてあるお金に関係しそうな話全て
年収で比較したときと条件面をトータルでみたときで比較すると優劣がひっくり返るなんてことも全然あります。
②どのような働き方になるか(仕事面の条件)
まず大事になるのは労働時間だと思います。
弁護士の働き方は比較的自由度が高いので、労働時間は人や環境によってぐっと変わってきます。
自由に休みをとったり、お昼からの出勤をする方もいれば、寝る時間も惜しんで働かないといけない方もいらっしゃいます。
仕事の対価はお金だけではないので、時給換算をすることに大きな意味を持たせすぎることは望ましくないと思いますが、あまりにもバランスが取れない場合には考え直すべきなのかもしれません。
とはいえ、アソシエイトや勤務弁護士的なポジションである間は、多少長い労働時間でも頑張る時期と割り切っている方も多いと思います。
あとは、指導を受けられる環境にあるかどうかでしょうか。
書面が真っ赤になるまで直される事務所もあれば、全くアドバイスがないかわりに広い裁量を与えられる事務所もあります。
自分がどのような弁護士を目指すか、成長の方法として何が合っているかなどを考え、それにマッチする事務所を探すと良いと思います。
就活の際の面接で面接官になる弁護士を良く観察すると良いです。そこで感じる印象は、かなり参考になります。
私は、面接をしていただいた弁護士に「厳しさもあるけど指導力があるし付いていきたいと思える方だな」との印象を受けて今の事務所を選びました。
事務所のメンバーの面構えや立地・内装等も参考になります。ホームページとかで写真が載っていたらひととおり見てみると良いです。
自分が入ったらどんな感じになるかな?
この人はどんな性格なんだろう?
ここが勤務先ならどこに住むかな?
色々と想像を巡らせてみると、より魅力を感じたり、違和感を感じたりすることがあります。
こうした印象って振り返ると結構当たっているのですよね。馬鹿にできないです。
③収入の伸び代がどれくらいあるか(金銭面の条件)
初年度の年収なんかよりよっぽど重要だと思うのがこの収入の伸び代。
初年度がそれなりの金額でも、伸びていかなければあまり意味はないです。
このあたりを確認するのはなかなか難しいですが、事務所の規模感や採用条件等からある程度のあたりをつけることはできます。
入所から数年間で最低保証が終了するところや完全歩合に切り替えというところは、実際にどんな感じの実績なのか面接の中で探りを入れてみたりすることをおすすめします。
④自分が弁護士の仕事に何を求めているか(仕事面の成長性)
結局、弁護士には個の力が求められるので、力がなければ収入も伸びないと思っています。
(どの職業でも個の力は重要ですが、とりわけ弁護士にとっては重要です。)
どんな環境に身を置くのがベストかは人それぞれなので、よくよく自分と相談して決めることが大事です。
何にも縛られずに動くことで力を発揮する方もいれば、厳しい指導を受ける中で才能を開花させる方もいます。
私は本来的には前者向きなのですが、マイペースさが足を引っ張ってプロとしての仕事振りに影響を及ぼしかねないので、後者の方向性で事務所を探しました。あと事務所として色々なチャレンジをしているところもポイントでした。
弁護士の働き方の多様さには年々拍車がかかっています。ここをどう考え、実行するかもひとつのスキルなのかもしれませんね。
さいごに
以上のようなことをなんとなくでも分かって行動できていれば、弁護士になって受けられる金銭的メリットはかなりあると思っています。
稼ぐためだけに弁護士を選ぶのはおすすめしませんが、仕事に感じる魅力と収入のどちらも追求したいという方には向いている職業のひとつです。
知識や情報がより重要となっている現代では、弁護士の仕事にはまだまだ夢があります。うちの事務所の代表は、引くほど稼いでいます。