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事実上の誘導

意外と知られていないのですが、司法試験の問題文では結論についての事実上の誘導が問題文でなされていることがあります。

 

基本的に結論のどちらかが絶対に正しいということはないので結論自体によって点差がつくことはありません。しかし、問題文の事実上の誘導に従った方が出題趣旨に沿った解答をしやすくなり、結論に至るまでの過程の部分で点数の獲得に繋がることは大いにあり得ることだと思っています。

 

例えば、平成30年度の民法設問2(1)の結論は設問2(2)の問題文から推認できます。

設問2(2)の問題文では「仮にアのDの発言が正当であると認められるものとした場合」とあります。設問2(1)では「アのDの発言は正当であると認められるか」が問われており、正当であると認められる余地が全くなければ、出題者があえてその直後の設問2(2)で「仮に〜」などと設定するはずがない訳ですから、正当であるとの方向で検討するのが得策ではないかとの予想ができるのです。

こうして結論にあたりをつけた上で、頭から原則通りに、素直に検討していきます。すると、あたりをつけた結論に至らないことが多々あります。その理由を考察すると大抵の場合は事案の特殊性に辿り着くことになります。その考察を踏まえ、あたりをつけた結論に持っていけるように論理をきちんと立てて三段論法に落とし込むと良い感じの答案に仕上がります。

私はこの方法で平成30年度の民法の設問2(1)を出題趣旨に近い思考を辿って解答することができました。

 

他にも、行政法の処分性や原告適格なんかはこの手法で結論のあたりがつけられることが多いです。

 

もちろん、これが通用しないこともあります。けれども、この視点を取り入れるのにコストは一切かかりませんし、極限状態の本番において事実上の誘導に気づけると精神的な負担も減らせるので、知っておいて損はしない、おすすめの分析方法です。