LAW BLOG

bar exam & legal news

司法修習のお金問題

今回は、司法修習生のお金問題について思うことを書いていきたいと思います。

 

2020年の現時点で、司法修習生のお金関係については概ね以下のような仕組みになっています。

基本給付金:毎月13万5000円(司法修習生が全員もらえる。)

修習専念資金(貸与金):毎月10万円(申請すれば誰でも無利息で借りれる。返済は5年後から。繰上返済可。扶養親族がいる場合は、12万5000円まで引き上げ可。)

住居給付金:毎月3万5000円

移転給付金:移転の距離等により算定

 

詳細は下記の裁判所HPをご参照ください。

裁判所|司法修習生の修習給付金について

裁判所|司法修習生の修習専念資金の貸与等について(第71期以降)

 

 71期からこのような仕組みになっておりまして、一切の給付金がなかった貸与制の世代(65~70期)に比べれば、恵まれているのは間違いないです。

しかしながら、65期以前と比較すれば、なお不十分です。

また、司法修習生の平均年齢の29歳(72期)を基準として見たときにも同年代(25~29歳)の平均年収が361万円ある中で、その半分にも満たない162万円(=13万5000円×12か月)というのは少ないというほかありません。

 

※さらに、税の問題やら何やらで実際に得られるお金はもっと少なくなりますし、保険等の面でも従来の待遇より劣る部分がたくさんあります。

 

この話になると「勉強させてもらってお金がもらえているのだから…」という考え方が見受けられることもあります。この考え方、私は違うと思います。

法曹の資格を得るためには、基本的に司法修習を修了することが求められています。資格を得たい人にとっては強制的な研修制度といっても過言ではないです。自ら研修を志願してお金がもらえるのであればそのような論も立ちますが、義務付けられた研修を受けるのに「(微々たる)お金をもらえていることをありがたく思いなさい」という話にはモヤっとします。

 

この不満にさらに拍車をかけるのが兼業禁止です。

「お金はあげないよ。でも、お金を稼いではいけないよ。」

簡潔に言えば、そういうルールになっていると思います。

現在は、原則として兼業が禁止されていて、例外的に申請が受理されれば兼業ができる(司法修習に影響がないとされなければならない)という建て付けです。

逆にすべきではないかと思います。

つまり、原則として兼業を認め、例外的に司法修習生として相当でない兼業をしている者や司法修習に明らかに専念できていない者に禁止を通告するような形です。

現在の形式ですと、兼業が従来からある程度上手くいっている人や司法修習生におなじみのアルバイト(予備校やロースクールの添削業や講師業)をする人くらいしか兼業をすることは難しい状況です。修習生の色々な可能性に蓋をしているような気がします。もちろん、今の制度の中で上手くやっている方もいますが、そういう方たちだってもっと大きなチャンスに恵まれるかもしれないですし、司法修習生全員の選択肢が広がることは良いことのように思うのですよね。

 

この問題は、経済的な面だけでなく機会損失にも繋がっているので、速やかに改善されることを願っています。(機会損失にもなっている以上、特に貸与制世代には貸与金の返還を免除するだけでは足りず、相当程度のお金が支払われて良いはずだと考えています。)

日本の司法を支えていくことになる人的資源への投資は必須です。何か自分にできることはないのか考えていきたいと思います。

 

下記の山中理司弁護士のHPに色々な情報がありますので、ご覧になってみると良いと思います。

司法修習生の修習給付金及び修習専念資金

 

余談になりますが、修習生の皆様には、弁護士になってから1か月分のお給料が入るまでの今の時期(12~1月頃)のために、お金をある程度貯めておくことをおすすめします(任官・任検志望の方でも同じですし、弁護士でもインハウスで4月入社の方であれば尚更ですね)。

引越しや各種支払関係、交通費等で結構な出費があります。