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二回試験対策(教材編)〜ベースラインは白表紙〜

先日、二回試験対策に使った教材についてツイートをしたところ予想外にたくさんの反応がありました(ありがとうございます!)。

 

 

やはり勉強の素材をどうするかについての情報は需要が高いのだと思います。ということで、自分がどの教材を使ったか書いていきます。

 

※あくまで試験対策としてメリハリをつけようという話。しかも主観的なもの。実務修習中に読むべき白表紙や本はたくさんある。

 

白表紙

まず、何よりも大事なのが司法研修所から配布される白表紙であることは明らか。

だが、白表紙もたくさんあり、どのように扱うかは迷うところ。二回試験まで終えてみて、私は3段階くらいに重要度を分けられるかなと考えている。

 

とってもたいせつ!な白表紙

 

・『事例で考える民事事実認定』

・『刑事事実認定ガイド』

・『検察終局処分起案の書き方』

この3点は最重要と言って良い白表紙。それぞれ民裁、刑裁、検察の事実認定の基礎となる教材で、これをマスターすることが先決。民弁、刑弁はこれらに書いてある知識を前提に弁護士(正確には、代理人、弁護人)の立場から書くというものなので、全ての科目の事実認定の基礎はこの3冊に収斂されると思っている。

 

たいせつ!な白表紙

 

・『新問題研究 要件事実』

要件事実の基礎をおさえるために読んでおくべき。短い時間で読み切れる。

 

・『事実摘示記載例集』

薄いのに要件事実を網羅的に勉強できる。ここに記載されている要件事実をおさえていれば、間違いない。即時取得の要件事実は書かれていないので、上記の新問研でチェック。

 

・『プロシーディングス刑事裁判』/『プラクティス刑事裁判』

これらは刑事裁判の手続を学ぶのに有用。手続への理解は刑事系科目の小問対策にも繋がる。

 

・『検察演習問題』

検察の小問は、ここから出題される。内容は司法試験的なものに若干実務的な視点が加わったという感じだが、量は結構あるので一度解答を作ってしまって見返せるようにしておくと良い。

 

・『検察講義案』

公訴事実等の記載例や略記表がある部分は二回試験本番でも貸与される。本番で見れるものとして、どんなことが書いてあるか目を通しておくと良い。

最初の基本書的な記載の方は、辞書的な位置づけにしていたが、基本書と役割が被るのでそれほど参照する機会はなかった。

 

・『刑事弁護の手引き』/『刑事弁護講義ノート』

いずれも刑弁の事実認定等について書いてあり、薄くて読みやすく内容も充実している。最重要に匹敵する。ただし、その記載内容は、後述する『刑事弁護の基礎知識』に包摂されているため、コンパクトさを重視する場面で使えば足りる。

 

そのほかの白表紙

 

他は二回試験対策との関係ではあまり使わなかった。もちろん、全く意味がないということではないが、高い費用対効果はのぞめない。実務的に重要なものは多いので、試験対策と実務的な勉強のどちらを目的に勉強するかということになる。司法試験をパスした方には釈迦に説法か。

 

 

市販の教材

 

・『紛争類型別の要件事実』

かつての白表紙だが、いまでも白表紙と同程度の位置づけである。民裁の授業でも何度か言及があった。

新問研、事実摘示記載例集、類型別に書いてある要件事実をおさえれば要件事実の守備範囲としては十分で、それ以上のものは条文や知識を踏まえてどう要件事実を立てるかという現場思考で対応するのが理想的だと思っている。それぞれで採用する説が異なる部分があるけれど、どの説で書いても平等に採点してもらえる(例えば、貸借型理論の採否はどちらでもOK)ので自分の好きなもので良い。

 

・『要件事実30講』

元教官が著者である。上記『事実摘示記載例集』との親和性が高い。例えば、第11講の抗弁以下の要件事実の記載(錯誤とか重過失の評価根拠事実、評価障害事実)はがっつり『事実摘示記載例集』に記載されているものと同じなのでどちらかが参照したとしか考えられない。したがって、『事実摘示記載例集』の演習問題と位置付けることができ、白表紙の勉強を補強してくれる教材といえる。

最新版は債権法改正にも対応。要件事実の演習はこの本でOKだろう。

(要件事実の演習本は好みによる。『要件事実問題集』や『完全講義 民事裁判実務の基礎』(いわゆる大島本)を使う方も多い。自分もこれらに一通りは目を通した。)

 

・『刑事弁護の基礎知識』

こちらも元教官が著者である。というか神山弁護士は、現在の刑弁の出題形式を作った方と言われているので、この本の考え方をなぞることは最良と言って良いだろう。そもそも二回試験対策に関係なく素晴らしい本で、刑事事件に携わる若手の裁判官や弁護士もデスクに置いている方が多い。

刑弁の事実認定、すなわち想定弁論が書けるようになるのはもちろん、小問対策もこの1冊でほとんどできる。もっといえば、刑裁や検察の小問対策もできるし、事実認定部分の勉強にもなる。それくらい刑事実務の基礎が凝縮されている。

 

おまけ

もし、記録を見て起案をするという勉強をしたいのなら『民事演習教材』『民事演習教材2』というものが法曹会から出ている。これらは冊子がまるまる記録なので、事実認定の練習に使える。自分は結局やらなかったけど、ゼミとか組んでやったら有意義だと思う。

『ステップアップ民事事実認定』は良く使われるものとしてあげられる。とても良い本だが、これを読むならジレカンを読めば良いように思う。(※最近改訂されたらしいのでもしかすると有用な情報があるかもしれない。)

『刑事事実認定重要判決50選』も良く使われるものとしてあげられる。自分はこの本を読み、咀嚼し、起案に吐き出すというところまではいかなかった。実務的には有用だが、試験対策として用いるのはやや迂遠にも感じた。自分の力不足に他ならないけれど。

執行保全の白表紙は、ややのっぺりしていて通読しても頭に入りづらいと感じたので、簡易な教材である伊藤塾の『予備試験論文2 民事実務基礎』の該当部分を読んだ上で、レジュメを中心とした復習中心の勉強をした。

 

 

こんな感じです。

司法研修所のルールの下でやっていく以上は、やはり司法研修所の配布した白表紙やそれに比肩するものをベースにすると良いと思います。

色々な市販の教材に手を出すよりは、修習で教わったことの復習が大事なんだろうなと。

 

ちなみに、白表紙は同じ言葉でも科目ごとに微妙にニュアンスが違うことがあります。例えば、刑裁と検察とでは「反対仮説」の意味が若干異なるとされています。白表紙をよく見ると記載の仕方に工夫が凝らしてあるんですよね。そういった科目ごとの異同も意識して勉強すると良さそうです。違いを見つけようとすると大変ですが、起案に影響するものについては適宜解説があるのでご安心を。